MTG重篤患者に向けるコラム2「黒枠病」
2013年5月22日 TCG全般 コメント (5) 「黒枠病」とは旧基本セットにおいて、再録されたカードが持つ白い枠に生理的嫌悪を感じ、それらを排斥すべく同じ名前、能力のカードであっても基本セットの再録カードではなく枠が黒い初版のカード、もしくは拡張セットに再録された枠の黒いカードを好んで使用、蒐集する状態のことを指す。
・黒枠病の歴史
黒枠病の歴史は古い。最初に印刷されたα、それに続くβの枠は黒く、またイラストの雰囲気や印刷の具合もあいまって、非常に美しい。プレイヤーはマジックのカードに闘いの激しさや魔法の美しさ、そして鋼の力強さを感じたことだろう。その余韻にひたりつつ新しいセットを心待ちにしていたプレイヤーの前に現れたのは、枠が白いUnlimited。購入者の10人に1人はこう思ったはずだ。
「何この白枠ダサいんですけど・・・」
黒枠病の誕生である。
・罹患の過程
正直な話、過程もクソも「白枠ダサい」と少しでも思った瞬間から黒枠病の始まりである。他言語病の場合は「ある程度の資産が~」などと引用したが黒枠病に関しては資産の有無はそこまで関係無い。何故なら、白枠から黒枠へ変えるにはお金がたいして必要でないカードもあるからである。
その筆頭が土地であろう。昔は基本セットや各エキスパンションのスターターボックスが存在し、そこに土地がある程度の枚数入っていた。それを足がかりにマジックを始めた人も少なくあるまい。その偶然最初に手に取ったスターターが拡張セットならいいが、これが5版や6版だったならば、基本地形が全て白枠で入っていることになる。ここでもし「白枠ダサい」という気持ちが一瞬でもよぎったらもうだめだ。もう基本セットの土地は使う気にならない。友人やショップでウルザスサーガやメルカディアンマスクスの基本地形を購入してしまう。しかも数百円程度で。これだけでも十分黒枠病である。
そこから先は資産の有無がかかわるものの、この時点で「白枠のカードに生理的嫌悪を感じ、それらを排斥すべく~」という冒頭の定義にひっかかるので、黒枠病は他言語病ほど面倒な過程を踏むことなく罹りやすい病気であると言える。
・黒枠病の種類
一口に黒枠病といっても多少の傾向が存在する。
1 軽度の黒枠病
土地やコモンなど比較的値段の安いものを黒枠のものに変える。白枠のカードに納得いかないながらも、「このカードの黒枠は高いから」という理由でしぶしぶ使う傾向がある。健康な人と病人のちょうど境目辺りに位置するポジションであり、ここで黒枠に変えるものの値段が少しずつ高くなっていくと(コモンだから大丈夫という理由でβの稲妻を買ったり)重篤患者への道が見え始める。
2 中度の黒枠病
デッキの中身が全て黒枠でないと気が済まなくなってくる。そのうち未だ値段に対する抵抗があり、初版ではなく拡張セット再版等で黒枠を確保したりなど、コストマネージメントを行いながらデッキの黒枠化を目指す患者を指す。
3 重度の黒枠病
デッキの中身が全て黒枠でないと気が済まなくなってくる上、初版でないと認めないという患者を指す。もう金銭感覚などという四字熟語は頭の辞書から抜け落ちており、札束を投げ捨て踏みつけ、修羅の道を形作っている。
・黒枠病の弊害
他言語病と同じだが、「金がかかること」これに尽きる。罹患の過程で資産の有無は余り関係無いとは言ったものの、軽度の黒枠病ですら多少の金がかかることは間違いない。重度になれば何十万、何百万という金をつぎ込むことになる。
しかし、重度の黒枠病患者において最大の弊害は金がかかることそのものではなく、「金がかかりすぎるせいで金銭感覚が崩壊する」ことである。一般人は値段の高い安いを自分の資産を基準にした絶対価値で判断することが多く、数百円のものは安い、数万円のものは高いと言いがちである。しかし、重度の黒枠病患者は相場との相対価値で判断することが多く、「βアンシーが10万かぁ。安いな買っておくか」と言い出す。確かに安いのだが、なまじ安さが見えるせいで所得に見合わぬ所業に臨む機会が多くなり、塩を舐める生活を強いられる者もいる。
・黒枠病の終焉
ここまで読んでピンとこなかった人も居るのではないかと思う。
そもそも黒枠病は「エターナル、EDH、モダンをプレイするプレイヤーのうちのごく一部のプレーヤー」が罹患する非常に限定的な病気である。WoCは第9版を最後に白枠のカードの印刷をやめており、モダンの殆どのカード、及びスタンダードの全てのカードが黒枠で印刷されている。そのため白枠のカードに触れる機会すらないプレイヤーが存在しているのが今のマジック界の現状である。
また、黒枠病は自分の必要とするカードが全て黒枠になった時点で完治する。この先白枠のカードが増えることがないのなら、黒枠病はその他のマジックにおける病気に比べ完治する可能性が高い。
「神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」という記述が聖書にあるが、これは黒枠病の終焉を予見した啓示であったのだろう。
・黒枠病の大敵
神に後押しされ、完治を保障された黒枠病であるが、しかしほんのわずかながら大敵が存在する。それは「スターター」「ポータル三国志」と呼ばれるエキスパンションである。彼らは独自のカードが存在しながら、白枠しかカードが存在しない。しかも「Grim Tutor」、「戦の惨害」、「伝国の玉璽」といった無視できない性能のカードが存在している。もしもこのカードを運用せざるを得ないとき、ストレスから黒枠病が悪化する可能性があるので、用法用量を守って正しくお使いいただきたい。
以上が黒枠病に関するコラムである。私自身も他言語病と並列して黒枠病に罹患し、デュアラン全てをFBBに、P9全てを黒枠にする苦行の果てに、必要なカードのほぼ全てを黒枠に変更することに成功し完治した。
が、最近Regrowthがヴィンテージで解禁されたため、Regrowthのβをあと3枚集める必要性が出てきて悩みの種となっている。そんな、かね、ない。
このコラムが、現在闘病中の者、これから闘病する予定の者、その他の病気と闘病中の者、なにいってんだこいつって思ってる者全てに対する優雅なMTGライフの一助になれば幸いである。
最後に、あるMTGプレーヤーの名言を引用し、締めの言葉とする。
「あ、そのBlack Lotus、白枠だからマナ出ませんよ」
Hグチ商会
・黒枠病の歴史
黒枠病の歴史は古い。最初に印刷されたα、それに続くβの枠は黒く、またイラストの雰囲気や印刷の具合もあいまって、非常に美しい。プレイヤーはマジックのカードに闘いの激しさや魔法の美しさ、そして鋼の力強さを感じたことだろう。その余韻にひたりつつ新しいセットを心待ちにしていたプレイヤーの前に現れたのは、枠が白いUnlimited。購入者の10人に1人はこう思ったはずだ。
「何この白枠ダサいんですけど・・・」
黒枠病の誕生である。
・罹患の過程
正直な話、過程もクソも「白枠ダサい」と少しでも思った瞬間から黒枠病の始まりである。他言語病の場合は「ある程度の資産が~」などと引用したが黒枠病に関しては資産の有無はそこまで関係無い。何故なら、白枠から黒枠へ変えるにはお金がたいして必要でないカードもあるからである。
その筆頭が土地であろう。昔は基本セットや各エキスパンションのスターターボックスが存在し、そこに土地がある程度の枚数入っていた。それを足がかりにマジックを始めた人も少なくあるまい。その偶然最初に手に取ったスターターが拡張セットならいいが、これが5版や6版だったならば、基本地形が全て白枠で入っていることになる。ここでもし「白枠ダサい」という気持ちが一瞬でもよぎったらもうだめだ。もう基本セットの土地は使う気にならない。友人やショップでウルザスサーガやメルカディアンマスクスの基本地形を購入してしまう。しかも数百円程度で。これだけでも十分黒枠病である。
そこから先は資産の有無がかかわるものの、この時点で「白枠のカードに生理的嫌悪を感じ、それらを排斥すべく~」という冒頭の定義にひっかかるので、黒枠病は他言語病ほど面倒な過程を踏むことなく罹りやすい病気であると言える。
・黒枠病の種類
一口に黒枠病といっても多少の傾向が存在する。
1 軽度の黒枠病
土地やコモンなど比較的値段の安いものを黒枠のものに変える。白枠のカードに納得いかないながらも、「このカードの黒枠は高いから」という理由でしぶしぶ使う傾向がある。健康な人と病人のちょうど境目辺りに位置するポジションであり、ここで黒枠に変えるものの値段が少しずつ高くなっていくと(コモンだから大丈夫という理由でβの稲妻を買ったり)重篤患者への道が見え始める。
2 中度の黒枠病
デッキの中身が全て黒枠でないと気が済まなくなってくる。そのうち未だ値段に対する抵抗があり、初版ではなく拡張セット再版等で黒枠を確保したりなど、コストマネージメントを行いながらデッキの黒枠化を目指す患者を指す。
3 重度の黒枠病
デッキの中身が全て黒枠でないと気が済まなくなってくる上、初版でないと認めないという患者を指す。もう金銭感覚などという四字熟語は頭の辞書から抜け落ちており、札束を投げ捨て踏みつけ、修羅の道を形作っている。
・黒枠病の弊害
他言語病と同じだが、「金がかかること」これに尽きる。罹患の過程で資産の有無は余り関係無いとは言ったものの、軽度の黒枠病ですら多少の金がかかることは間違いない。重度になれば何十万、何百万という金をつぎ込むことになる。
しかし、重度の黒枠病患者において最大の弊害は金がかかることそのものではなく、「金がかかりすぎるせいで金銭感覚が崩壊する」ことである。一般人は値段の高い安いを自分の資産を基準にした絶対価値で判断することが多く、数百円のものは安い、数万円のものは高いと言いがちである。しかし、重度の黒枠病患者は相場との相対価値で判断することが多く、「βアンシーが10万かぁ。安いな買っておくか」と言い出す。確かに安いのだが、なまじ安さが見えるせいで所得に見合わぬ所業に臨む機会が多くなり、塩を舐める生活を強いられる者もいる。
・黒枠病の終焉
ここまで読んでピンとこなかった人も居るのではないかと思う。
そもそも黒枠病は「エターナル、EDH、モダンをプレイするプレイヤーのうちのごく一部のプレーヤー」が罹患する非常に限定的な病気である。WoCは第9版を最後に白枠のカードの印刷をやめており、モダンの殆どのカード、及びスタンダードの全てのカードが黒枠で印刷されている。そのため白枠のカードに触れる機会すらないプレイヤーが存在しているのが今のマジック界の現状である。
また、黒枠病は自分の必要とするカードが全て黒枠になった時点で完治する。この先白枠のカードが増えることがないのなら、黒枠病はその他のマジックにおける病気に比べ完治する可能性が高い。
「神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」という記述が聖書にあるが、これは黒枠病の終焉を予見した啓示であったのだろう。
・黒枠病の大敵
神に後押しされ、完治を保障された黒枠病であるが、しかしほんのわずかながら大敵が存在する。それは「スターター」「ポータル三国志」と呼ばれるエキスパンションである。彼らは独自のカードが存在しながら、白枠しかカードが存在しない。しかも「Grim Tutor」、「戦の惨害」、「伝国の玉璽」といった無視できない性能のカードが存在している。もしもこのカードを運用せざるを得ないとき、ストレスから黒枠病が悪化する可能性があるので、用法用量を守って正しくお使いいただきたい。
以上が黒枠病に関するコラムである。私自身も他言語病と並列して黒枠病に罹患し、デュアラン全てをFBBに、P9全てを黒枠にする苦行の果てに、必要なカードのほぼ全てを黒枠に変更することに成功し完治した。
が、最近Regrowthがヴィンテージで解禁されたため、Regrowthのβをあと3枚集める必要性が出てきて悩みの種となっている。そんな、かね、ない。
このコラムが、現在闘病中の者、これから闘病する予定の者、その他の病気と闘病中の者、なにいってんだこいつって思ってる者全てに対する優雅なMTGライフの一助になれば幸いである。
最後に、あるMTGプレーヤーの名言を引用し、締めの言葉とする。
「あ、そのBlack Lotus、白枠だからマナ出ませんよ」
Hグチ商会
コメント
マッキー法は病気通り越して電波の域に達してるww
さすがヘギーおにいさんさんやで…
>蛙さん
蛙さんは完治しないとおもいます(´д`
>しーかー
病気は突然重くなるよ
非常に面白い記事ありがとうございます!!
私は拡張アートすることで克服しました!